はじめに
クイズを作るのって、意外と難しいですよね。「問題を作るだけでしょ?」と思っていても、いざ作ってみると「なんか引っかかる…」「なんか面白くない…」ということが多々あります。
私はクイズを作り始めてかれこれ10年以上経ちますが、最初の頃に作ったクイズを見ると「ひどいクイズだな…」と思うことが多々あります。そこからクイズの作り方や考え方を学び、多くのクイズを作ったことで、今ではまともなクイズを作れるようになりました(まだまだ発展途上ではありますが)。
そんな私が今回は「作問初心者が陥りがちなミス5選」をまとめて紹介しようと思います。
ミスの例示のために、お笑い芸人・粗品さんの「クイズ王への道」という動画を参考にさせていただきました。全100問を1問ずつ確認しながら、「初心者がつまずきやすいポイント」を自分なりに5パターンに分類しました。
▼参考にさせていただいた動画はこちら
この記事では、その5パターンを実例とともに紹介していきます。これを読めば、あなたのクイズのクオリティが一段上がるはずです!
本編に入る前に…
まず、この記事は動画の作問者の方を批判したり貶めたりする意図は一切ありません。私も作問するので分かりますが、100問もの問題を作り上げるのは大変な労力であり、すべて完璧な問題にするというのは簡単なことではありません。作問された方には尊敬の念を持ちながらこの記事を書いております。
また、クイズの作問は本来とても自由なものです。 ここで挙げる内容も「これが絶対の正解」と決めつけるものではなく、あくまで「こうするともっと良くなるかもしれない」という一つの提案にすぎません。作り手の意図やクイズの趣旨によっては、あえてセオリーを外すことが正解になる場合もあります。その前提で、気軽に読んでいただけると嬉しいです。
それでは、本題に入っていきましょう。
作問初心者が陥りやすい5パターンのミス
① 事実誤認:情報の間違い
初心者がやりがちなのが、問題文の説明が間違っているケースです。自分では正しいと思って書いていても、厳密に見ると少し違う、ということが起こりがちです。
気になった例① -1:
雨でもないのに大きな傘を差して目立つような比喩から、物事を必要以上に誇張することを意味する日本語は何でしょう?(答え:大袈裟)
これは完全に前振りの情報が間違っています(動画内でも訂正されていました)。「袈裟」は僧が衣の上につけている法衣のことです。ネットの情報が間違っていることもあるので、裏どりは慎重に行わなければなりません。
物事を必要以上に誇張することを、僧侶が着る法衣を用いた漢字3文字の表現で何というでしょう?
これで正しい情報となります。前振りで「大袈裟」「針小棒大」「大風呂敷」などを想定させておいて、後振りで確定させるという流れにしています。「漢字3文字」を入れることでより正解が出やすいようにしています。
気になった例① – 2:
工場や自動車などから出る排気ガスが原因で、雨がふだんより強い酸性になり、森林の衰退や湖の生き物に被害を与える現象を何というでしょう?
一見正しく見えて、解答者にも意図は伝わると思いますが、酸性雨は厳密には「酸性の強い雨」のことであり、「森林や生き物に被害を与える現象」を指すものではありません。酸性雨を答えにするのであれば「雨」そのものを問う必要があります。
森林や生き物などに被害を与えてしまう、工場や自動車などから出る排気ガスによってpHが5.6以下となった雨のことを何というでしょう?
前振りに酸性雨が与える被害を書き、後振りでは「雨」そのものを問うようにしました。
気になった例① – 3 :
サッカーで、試合中にけがや選手交代などで失われた時間を補うために審判が追加で示す時間を何というでしょう?(答え:アディショナルタイム)
アディショナルタイムは試合後に追加される時間のことであり、「審判が示す時間」のことではありません。たしかにサッカーの試合では第4審がアディショナルタイムを掲示しますが、それが本質なわけではありませんし、プロの試合でなければ表示されない時もあります。
サッカーで、試合中にけがや選手交代などで失われた時間を補うために追加される時間を何というでしょう?
「追加で示す」を「追加される」に変更しました。
① 事実誤認のまとめ: 問題を作る際には、辞書や信頼できる情報源で一度確認すると安心です。
② 未確定:答えが1つに絞れない
「答えが1つに絞りきれていない」問題も、よくあるパターンです。作った本人は1つの答えを想定していても、別の答えも成立してしまうことがあります。
気になった例② – 1:
「本格的に絵を仕上げる前に、構図や形をざっくり下書きとして描くことを何というでしょう?」(答え:スケッチ)
スケッチは「下書き」そのものというより、対象物を素早く描き留める行為全般を指す言葉です。「下書き」としての意味に絞るなら、「下絵」や「アタリ」の方がより近いかもしれません。動画内では長野さんが「アタリ」と答えて不正解になっていましたが、今回の問題文からアタリを不正解とは言いきれなさそうです。
こういう一般的な言葉に関しては別解も生まれやすいので、きちんと「スケッチ」に確定する要素も欲しいです。
『映画ドラえもん のび太の絵世界物語』の主題歌であるあいみょんの楽曲名にもなっている、風景や物体を大まかに描くことを意味する言葉は何でしょう?
楽曲の前振りを入れることで、答えを1つに絞ることができます。
気になった例② – 2:
「四字熟語で、言葉に出さなくても互いの心や気持ちが通じ合うことを意味する言葉は何でしょう?」(答え:以心伝心)
ことわざや四字熟語ではあるあるなのですが、同じような意味の言葉が別解になってしまうことがあります。今回の問題だと「意気投合」なども連想されやすく、答えを1つに絞るには少し説明が足りない印象です。
四字熟語で、言葉に出さなくても、互いの心や気持ちが通じ合うことを、「心」という漢字を2回用いて何というでしょう?
後振りに「心」が2回入るという制限をすることで、以心伝心に確定させることができます。
四字熟語やことわざなどの言葉系の問題では、「類義語」を含めてネット検索すると良いです。
気になった例② – 3:
食べ物を食べたあと、体の中でそれを消化するために働く袋のような臓器は何でしょう?(答え:胃)
多くの人は「胃」と答えると思いますが、小腸や大腸も消化のために働き、広義的には袋状の構造をしているので、これらを完全に不正解とすることができません。問題文中に胃に特有の情報を入れてあげましょう。
ペプシンを含む消化液によって食べ物を消化する、動物のお腹にある袋のような臓器は何でしょう?
ペプシンは胃の消化液に含まれる消化酵素です。これで胃に確定するかと思います。
② 未確定のまとめ: 問題を作ったら「他に当てはまる答えはないか?」と自問してみましょう。複数浮かぶようなら、問題文で絞り込まなければなりません。
③ 情報の順番:いきなり簡単な情報が来る
早押しクイズの基本構成は、「マイナーな情報→メジャーな情報」の順で提示することだと言われます。マイナーな情報を知っている人の方が早く押せるというのが、早押しクイズのあるべき姿だからです。
(粗品さんのクイズ企画では、前振りに難しい情報を入れるとクイズ王側が圧倒してしまうからという理由があるかもしれませんが…)
気になった例③ – 1 :
プロ野球の読売ジャイアンツが本拠地として使い、屋根のある日本初の本格的なドーム球場として知られる施設は何でしょう?(答え:東京ドーム)
個人差はあるかもしれませんが、「読売ジャイアンツの本拠地」と「屋根のある日本初の本格的なドーム球場」であれば、後者の方がマイナーな情報になるかと思います。前者の情報は読売ジャイアンツが東京のチームであることさえ知っていれば、簡単に東京ドームという答えに辿り着けると思います。
日本初の屋根のある本格的なドーム球場である、プロ野球チーム・読売ジャイアンツの本拠地としても知られる施設は何でしょう?
情報の順番を入れ替えました。また、「屋根付きのドーム球場」であることが「日本初」なので、日本初という形容詞を前に持ってきました。
気になった例③ – 2 :
橋を渡る前に叩いて安全か確認してから渡る、というたとえで、用心深く行動することを表すことわざは何でしょう?(答え:石橋を叩いて渡る)
前振りの「橋を渡る前に叩いて安全か確認してから渡る」でほとんど答えを言ってしまっています。これは後振りにある言葉の意味を先に持ってきた方が良いでしょう。
ことわざで、用心深く行動することを、橋を渡る前に叩いて安全か確認することから何というでしょう?
①で紹介した「大袈裟」の時と同じように、前振りの段階で「石橋を叩いて渡る」「転ばぬ先の杖」などを想定させておいて、後振りで確定させる流れになります。
③ 情報の順番のまとめ: 問題文を読んで「各情報の有名度合い」を考えましょう。有名なヒントはなるべく後ろに配置しましょう。
④ ミスリード:解答者の勘違いを招く
問題文の表現によって、意図していない答えを連想させてしまうパターンです。見当違いの方向に引っ張られてしまうと、解答者が不満に思う可能性があります。
気になった例④ – 1:
アイドルや音楽グループで、特定のメンバーではなくグループ全体を応援することを何というでしょう?(答え:箱推し)
これは好みの違いもあるかもしれませんが、「特定のメンバー」を先に言うことで「単推し」に誘導してしまう可能性があります。以下の修正案①のように後半に対比の構造をとるか、修正案②のように「ですが問題」にして読み方を工夫する方が聞き手には親切です。
アイドルグループや音楽バンドで、グループ全体を応援することを、特定のメンバーだけを応援する「単推し」に対して何というでしょう?
アイドルグループや音楽バンドで、特定のメンバーだけを応援することを「単推し」といいますが、グループ全体を応援することを「何推し」というでしょう?
修正案②では赤文字の部分を強調して読むと「ですが問題」だと思ってもらいやすいです。詳しくは以下の記事をご覧ください。
④ ミスリードのまとめ: 問題を解答者になったつもりで最初から読んでいき、勘違いしそうな箇所がないかを探しましょう。
⑤ 日本語表現:頭に入ってこない不自然な表現
内容は正しくても、日本語の表現がぎこちないと違和感が残ります。スラスラ入ってこない問題文は、それだけで解答者にちょっとしたストレスを与えてしまいます。
気になった例⑤ – 1 :
アメリカで発明され、じゃがいもを薄く切って揚げ、塩や味付けをしたお菓子で、発明者がフライドポテトが厚すぎると文句を言った客を驚かせるために作ったものは何でしょう?(答え:ポテトチップス)
「塩や味付けをしたお菓子」という日本語はおかしいので修正します。また、③「情報の順番」につながりますが、「じゃがいもを薄く切って揚げ」でほとんどの人が「ポテトチップス」だと分かってしまいます。
アメリカのホテルのレストランで客が「フレンチフライを分厚く切りすぎ」というクレームをしたことがきっかけで開発された、じゃがいもを薄く切って揚げ、塩などで味付けしたお菓子は何でしょう?
この問題であれば、前振りで「ポテトチップス」と推測で答えられる人もいるかもしれないし、いなくても後振りまで聞けばほとんどの人が分かるという構造になります。元の問題文の「驚かせるため」という情報は少し調べても見つからなかったので、単にクレームがきっかけというように変えました。
気になった例⑤ – 2 :
東京の主要駅をぐるりと一周する、JR東日本の環状運転をしている鉄道路線は何でしょう?
たしかに山手線には東京の主要駅が多くありますが、主要駅とはいえない駅もありますし、この問題文だと東京の主要駅を全て周るようにも読み取られます。また、後振りの「JR東日本の環状運転をしている鉄道路線」も違和感があります。
「東京駅」「新宿駅」「渋谷駅」といった東京の主要駅を通っている、JR東日本によって運行されている環状線は何でしょう?
主要駅を列挙する形にし、後半の表現も変更しました。
⑤ 日本語表現のまとめ: クイズを作り終えた後に、一度問題文を声に出して読んでみましょう。つっかえる部分、読みにくい部分、意味がとりにくい部分があれば必ず修正しましょう。
良かった問題
ここまでは問題の悪かった点ばかり紹介してきましたが、動画内で良い問題もたくさんあったので一部紹介していきたいと思います。
良かった問題① :
GoogleChromeやSafariのように、Webページを表示してインターネットを利用するためのソフトを何というでしょう?(答え:ブラウザ)
前振りで例示をし、後半でその定義を書く典型的なクイズの構文です。ミスリードや事実誤認もなく、良い問題だと思います。
良かった問題② :
物事をしつこく細かく問いただすことを、植物の部位を表す言葉を2つ使って何というでしょう?(答え:根掘り葉掘り)
先述した通り、言葉系の問題は「未確定」になりやすいですが、「植物の部位を表す言葉を2つ」という制限を入れることできちんと答えを確定させています。
良かった問題③ :
クマやリスなどの動物が、冬の寒い時期に体温や代謝を下げ、ほとんど活動せずに過ごすことを何というでしょう?(答え:冬眠)
前振りに挙げた2つの動物が絶妙でいいですね。冬眠するイメージがあり、その他の共通の特徴があまりない(強いてあげれば哺乳類などはありますが)2種類を持ってきています。動画内でも長野さんが2種類の動物を聞いただけで答えています。作問者の意図と解答者の推測がマッチした良問だと思います。
まとめ
| # | ミスの種類 | 一言まとめ |
|---|---|---|
| ① | 事実誤認 | 情報の間違い |
| ② | 未確定 | 答えが1つに絞れない |
| ③ | 情報の順番 | いきなり簡単な情報が来る |
| ④ | ミスリード | 解答者の勘違いを招く |
| ⑤ | 不自然な日本語 | 頭に入ってこない不自然な表現 |
改めて私が過去に作った問題を見ると、これらのミスをたくさんしてたなぁと実感します。
作問初心者の方でも、この5つを意識するだけでクイズは見違えるほど良くなります。クイズ作りは「正解を知っている作問者側」と「正解を知らない解答者側」の視点のギャップを意識することが大切です。個人的には「熱量」も良いクイズを作る上で大切な要素なのですが、その話はまたどこかで…。
自分だけで完結させず、できれば第三者に読んでもらうのが上達への一番の近道。ぜひ、肩の力を抜いて作問を楽しんでみてください!







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